第41回大阪国際女子マラソン特別対談 | マラソン選手 川内優輝氏×奥村組代表取締役 奥村太加典氏 対談

第41回大阪国際女子マラソン特別対談 | マラソン選手 川内優輝氏×奥村組代表取締役 奥村太加典氏 対談

「鉄壁のフェンス」で開催できた昨年大会

昨年の第40回大会はコロナ禍のため、長居公園(大阪市東住吉区)の周回コースでの開催となり、奥村組は防護フェンスを設置しました

「鉄壁のフェンス」で開催できた昨年大会

フェンス設置の打診があったのは大会の開催が半月後に迫った頃でした。すぐに協力会社に打診したところ最初は「他の現場で仕事をしているので、急に言われても無理ですよ」という反応でした。しかし、フェンスを設置できなければ大会が成立しないことを伝えると、なんとかせねばと精鋭を集めてくれて部隊を編成することができました。協賛社としても建設会社としても、設置したフェンスが倒れるようなことは絶対にあってはならないので、風荷重を計算し、設置場所の状況や安全性を考慮しつつ、入念に作業計画を行いました。材料の搬入からフェンス設置、撤去、搬出までを6日間で行う突貫作業でしたが、無事に大会を開催することができてホッとしています。

レース当日は本当にストレスを感じることなく走ることができました。前日に下見でコースを走っていたときに、大急ぎでフェンスが設置されているのを見て、すごいことをしているな、と。当日に完成した様子を見て、これができるのは奥村組が協賛社だからこそだと思いました。

一般の方からインターネット上で「鉄壁のフェンス」という書き込みをしていただき、社員のモチベーションも上がりました。川内選手にもツイッターに書き込んでいただいたので、その影響も大きかったと思います。

私もペースメーカーを務めたことへの反響が大きくて、感動したといっていただきました。とてもうれしく思いましたが、何より優勝した一山麻緒選手(ワコール)が東京大会で8位入賞を果たしてくれたことがうれしかったです。昨年の大阪国際女子マラソンで日本記録を更新できなかった悔しさが、もう一回頑張ろうという気持ちを持つきっかけになったのでしょう。もし大会が開催されなかったら、東京の入賞はなかったかもしれません。大阪国際女子マラソンが無事に開催できて本当によかったです。

スポーツはアスリートの日常の努力が本番の活躍につながります。選手の血のにじむような努力に裏付けられた活躍は、見ている人を「自分も仕事や学業を頑張らなければ」という前向きな気持ちにしてくれます。コロナ禍で開催できなかった大会が多くありますが、早く通常の形で開催されることを願っています。

コロナによって人と人との関係が断ち切られ、なるべく人と離れて過ごさないといけない、会話も控えないといけないという状況の中で、スポーツは必ず力を発揮すると思います。特にマラソンは一緒に走った仲間たち、支えた仲間たちで思いを共有できます。前回大会を走った100人弱のメンバーは絶対にあの大会を忘れることはないでしょう。

多くの人の支えに感謝

奥村組は、大阪国際女子マラソンに2027年大会まで協賛することを発表されています

多くの人の支えに感謝

当社の社業とマラソンは共通している点が多くあるんです。レースはスタートからゴールまでですが、そこに臨むまでには選手たちの日々の練習の積み重ねがあります。私たちも工事の着工がはじまりではなく、その前から技術開発や営業活動などさまざまな準備があります。着工後も周りの人に支えてもらうことで、竣工というゴールを迎えられる点もマラソンと共通しています。レースにかける選手たちの姿と当社社員の仕事に取り組む姿勢とが重なり、共感できたことが協賛を決めた理由です。奥村組が本社を置く大阪の伝統のある大会を今後も継続して支えていきたいと思います。

大会に協賛し続けていただけることは、ランナーとしても本当に心強いです。私も大会に招待してもらったときは感謝の気持ちを持って走っていたつもりだったのですが、コロナ禍で半年間もレースがない状況になった時期に、これまで目に見えない部分で多くの人が支えてくれていたからこそ開催できていたのだと改めて気付き、感謝の気持ちがより強くなりました。

大会の開催にあたっては、毎回多くのボランティアの方々にもご協力いただいています。そうした方々の支えも大きいと思います。

持続的な発展

奥村組は建設業の立場で、「SDGs(持続可能な開発目標)」に貢献する取り組みをされています。持続可能な社会への考え方はいかがですか

建設業の事業活動はその多くがSDGsにつながるものです。例えば、道路を建設する工事があったとします。道路ができることで病院通いが楽になる、救急搬送の時間が短くなるとSDGsの17ある目標の内、「3 すべての人に健康と福祉を」につながります。当然、「11 住み続けられるまちづくりを」にもつながります。事業活動を通じて、持続可能な社会づくりに貢献していきたいと考えています。

私は生涯現役を目標にランナーを続けています。今はマスターズ記録もありますので、記録を破っていきたいと思いますし、「サブ20(2時間20分以内)」の回数が100回を超えてギネスブックにも載せていただいているので、その記録を150回、200回と伸ばして、いつまでも頑張る姿を見せていきたいと思っています。

世界に羽ばたく大会に

今回の第41回大会への思いをお聞かせください

東京のビッグイベントは終わりましたが、次のパリが2年半後に迫っていますので、この大会から世界に羽ばたくヒロインが誕生することを大いに期待しています。2025年には大阪・関西万博も開催されますので、それに向けて大阪の注目度を高める大会にもなればいいなと思っています。

日本のマラソン界では男子の2レースが昨年で終了し、トップランナーが集うエリートマラソンはこの大阪国際女子マラソンだけになってしまいました。この伝統あるロードレースで素晴らしい戦いが繰り広げられることを期待しています。余談ですが、前回、ペースメーカーとして参加した際に印象的だったのは、指導者の方々が練習では厳しいと聞いていたんですが、レース中はみんな「大丈夫だよ」「まだ行けるよ」と優しく声掛けしていることでした。

そういった励ましが選手の頑張りを後押しするのでしょうね。それは企業でも同じです。上司はどうすれば部下の能力を最大限に引き出せるか、やる気にさせられるかをしっかりと意識し、誰もがいきいきと活躍できる職場をつくっていかなければなりません。川内選手も前回大会ではペースメーカーとして選手の能力を引き出す最高のサポートをしていたと思います。今後、川内選手がレースで活躍する姿はもちろんですが、またペースメーカーとして走る姿も見たいですね。

ときにはペースメーカーも引き受けながら、周りの人にも喜んでもらえる選手になっていきたいと思います。実は、今回の大阪国際女子マラソンもコロナ禍で外国人選手を呼べないということなので、ペースメーカーを務めさせていただこうと思っています。

それは協賛社としても、とてもうれしいです。ぜひ、いい記録が出るように選手を引っ張ってください。

やっぱりマラソンで記録を出すと自信になって、どんどん次のステップへと活躍できるようになります。ペースメーカーとして選手が世界に羽ばたく後押しができればと思っています。

ありがとうございました